Google HTTPS暗号化サイトの検索順位優遇発表。Googleの意図とは?
2014年8月7日、SEO業界に衝撃のニュースが駆け巡りました。
GoogleがSSL対応サイトを検索結果で優遇するという発表です。
私ひにしは現在、株式会社so.laというSEOサービスを提供している会社でお客様へSEOのコンサルティングを行っています。今回の「GoogleがSSL対応サイトを検索結果で優遇」の件について、多くのお客様からWebサイト運営者の方より様々なご質問をうけています。また、私どものお客様だけでなく、「実際どうすればよいのだろう・・」と不安に思われているWebマスターの方は非常に多くいらっしゃいます。
なぜこんな突然の発表を行ったのか・・
これまでのGoogleの姿勢から、今回の発表までいったいGoogleはどういう事を考えた結果、今回の「SSL対応サイト優遇」の発表を行ったのか。全てのWebサイトに関わるものであるため、思い悩む皆様に向けてその回答にもなるものを本記事にまとめさせていただきました。
▼Googleの発表内容
HTTPS as a ranking signal
http://googlewebmastercentral.blogspot.jp/2014/08/https-as-ranking-signal.html
HTTPS をランキング シグナルに使用します
http://googlewebmastercentral-ja.blogspot.jp/2014/08/https-as-ranking-signal.html
Googleが「SSL対応」を「ランキング シグナルに使用します」と明言
私は2007年からこの仕事に就いているのですが、過去3~4年で、「これは検索順位のシグナルに使いますよ」と大きく明言したものは本当に僅かです。
そのうちの1つがページスピードシグナルですが、これも2010年に発表されたもので、それ以降、約4年ぶりに「シグナルとして使用する」と公式に言及された大きい発表が今回の「SSL対応サイト優遇」なのです。
参考)
Using site speed in web search ranking
http://googlewebmastercentral.blogspot.jp/2010/04/using-site-speed-in-web-search-ranking.html
Google、検索順位にページ読込速度の考慮を開始 [詳細版]
http://www.sem-r.com/google-2010/20100412000719.html
つまり、これはかなりイレギュラーな発表でありGoogleにとっては非常に珍しいこと。であることが分かります。
ちなみに、「検索順位決定のシグナルには用いていないよ」と公式にGoogleが言及するものはこれまでも結構ありました。例えば、少し前にも話題になった「Authorship (著者情報)」です。
参考)Google Authorship (著者情報)、現状は検索順位に影響せず
http://www.sem-r.com/google-2010/20131031230704.html
米GoogleのJohn Mueller氏(Google Webmaster Tools Analyst)は2013年9月末に開催されたGoogle Webmaster Hangoutにて、現在のところ authorship は検索順位に影響していないと回答した。同社Pierre Farr氏も同様に authorship は現在のところ検索順位決定のシグナルに用いていないと発言
このように「シグナルには使っていないですよ」ということは、結構言及されてきました。しかし、「これはシグナルに使いますよー!」という発表は本当に本当に珍しい事なのです。そんな理由もあって大騒ぎになっているわけです。
「SSL対応サイト優遇」数か月前は「決定は当分先」とのコメント
実は2014年4月の時点ではGoogleは「SSL対応サイト優遇」についてこんなことをいっています。
米Googleが安全なSSL導入サイトの検索順位を優遇することを検討している件について「まだ社内で議論がはじまったばかりだ」と同社関係者が語った。米Wall Street Journal が報じている。
どういう事かといいますと、4ヶ月前に「議論が始まったばかり」と言われていたことが、4ヶ月でテストを済ませて実装されてしまったということになります。
そもそも、Googleのランキングに関する姿勢はしっかりと筋が通っているものでした。
あくまでも「ユーザに役立つ」「良いコンテンツを作る」といった視点で価値があるページを評価しますよという姿勢です。それはもう繰り返し語られてきました。
上述にもある、「ページスピードをシグナルに使うよ!」という発表も、このGoogleの姿勢からは外れるのではないか、スピード上げれば順位上がるのであれば、いいコンテンツとか関係ないのでは?と思う方はいらっしゃると思います。
ただ、ページスピードの最適化が直接もたらすユーザーへの満足度を高めることはWebの常識となっている状況です。早い方がユーザー的にもうれしいので、ほぼ同じクオリティのコンテンツがあった時に、スピードが速い、遅いを1つのシグナルとして使うことはあまり違和感の無いものでした。
しかし、今回のSSL通信という技術を使うか使わないかだけでランキングに差異が出るということは、これまでの流れには無い動きです。
ネットサーフィンを普通にしているユーザーが特定の買い物カゴやフォーム以外の通常のページでSSL化をしていたとして、「httpsでセキュアだわあ。いいわあ」とhttpsであることを喜んでいることはほとんどないと思いますし、ページスピードの件とはユーザー面から考えても異なる意図があるのだろうということがなんとなく想像できます。
どうしてGoogleは異例の「SSL対応サイト優遇」の発表をしたのか
ここからはGoogleが言及したことでは無く、あくまでもこれまでの流れを踏まえての私見です。
Googleは、「インターネット上での通信の多くは暗号化されない」という現在の常識を変えようとしていて、その一環としての今回の「SSL対応すると順位優遇するよ」発表なのではないかと考えています。
暗号化された安全な通信ができるSSL対応にWebサイトがなれば、インターネットユーザーにとっていくつかのリスクが低減することは確かです。しかし、Webサイト運営側としてはそう簡単にはSSLへの移行はできません。移行コストが非常に高くなることも多く、ECサイトや問い合わせフォームなど十分な必要性がない限りSSL対応は先送りされる、あるいは特に検討もされてこなかったというサイトも多いと思います。
そういった現状はGoogleも認識をしていて、「インターネットをもっと安全な場にしたい」そのためには、「暗号化された安全な通信が行えるサイトを増やす必要がある」、そんなサイトを増やすためには「SSLが必要」、SSL対応は決済などの通信に限られがちだけど「どうにか増やしたい」。そんな思いの結果として、SSLを普及させるメリットを増やすためにランキングシグナルとしての採用を発表したのではないでしょうか。
多くのサイトにとって、「確固たる理由がない限りSSL対応は先送り」だった状態を、「順位優遇を飴として理由にさせる」ことで、インターネットの常識を変えて、ネットをより安全な形に変えようとしているのではないかと考えました。
「SSL優遇」大々的な発表にも関わらず現時点ではあまりに影響が少ない
今回の発表を踏まえて、SSL化の有無とランキングについて過去数ヶ月のデータを見直しました。その結果、現段階ではSSLの有無による順位影響はほぼ確認ができませんでした。Googleの言うとおり現段階では極めて小さな影響なのだと思います。
ランキングファクターとしてとしてはまだまだかなり小さい状態であると考えられます。
もし、わずかなお金で採用できるSSLを採用するだけで順位が目に見えて上がるとしたら、現時点でその検索結果はあまり使いやすくならないと思います。世界一の検索エンジン、Googleがそんな状態にするとはかなり考えづらいです。これまでのSEOの常識でも「容易に導入できる特定の技術を採用するだけで順位が上がる」なんてことは考えられません。
しかしながら、今回の流れ自体が「SEOの常識外で動いている」ものでは?と考えると、SSLの順位への影響が一気に加速する可能性が無いわけではないと心しておく必要はありそうです。
サイトのSSL対応はどういう方針で進めていくべきなのか
現状は急激な順位の変化は考えづらく、今すぐに対応する必要はありませんがいずれは、SSL対応を行わなければならないであろうというのが、現段階の考えです。
まず、皆様にお伝えしたい、決して行うべきではない事は「検討をせずに慌ててSSL化すること」です。
httpからhttpsへの移行は見た目では単純かもしれません。でもその移行を安易に意識せずに行う事で、検索エンジンからの評価を大きく下げた実例はいくつもあります。(最低でも昨年までの)Googleは、httpsとhttpのサイトをほぼ別のサイトとして扱う場合があります。配慮を行わないで変更するhttps化は、ドメインを移転するのとおなじようなリスクを伴うことを是非覚えておいてほしいです。
Googleも移行については以下にコンテンツを用意し、誤った設定などを行わないよう言及しています。
サイトの保護
https://support.google.com/webmasters/answer/6073543
弊社so.laとしては現段階ではこのようにお話しています。
- 新規サイト→今後https化が必要になるかもしれないので、その時に大きな移行コストをかけないように最初からSSL対応が望ましい
- 大きなシステム/サイト変更のタイミング→SSL化を行う工数が普段よりも少なく行えるタイミングがあれば、SSL化を検討するべき
- その他→ひとまず様子見。
大きな移行コストをかけてhttps化をしても今時点でその見返りはかなり小さいものになると思います。しかし、今後長期で見るとhttps化が必要になる可能性が高いので、移行コストを可能な限り最小化できるように、検討をしていくべき。という形でお話しさせていただいています。
まとめ
今回の発表は、検索の精度向上という普段のGoogleの考えではなく、「インターネットをよりよいものにするための試み」と私は考えています。
しかしながら、この流れはいままでに無い部分も多く、今後どうなるかは確信が持てない、というのが正直な所です。
ウェブの世界のSSL化が進むことが、インターネットにとって良いことなのか、それとも高い移行コストをWeb運営者に強要する悪いことなのかは専門では無い部分なので、正直わかりません。ただ、SSL通信対応は、一般的に言われる暗号化以外でも、高速化を目的としたSPDY対応等、様々なメリットが有ることは確かですし、悪い流れではないのかなあと思います。
ただ、SEOに関わる者としましては、今回のGoogleのアナウンスを根拠にした「Googleお墨付きなのでSSLにすれば絶対順位上がります!」「うちのSSL証明書は他社よりも順位が上がる!」といった香ばしい営業トークに騙されて、目に見えた効果が出ない、稚拙な移行をしてしまって逆に下がった、などの悲しい状態になって騒ぎになることは容易に予想がつきます。(実際すでに似た動きが出てきていることもキャッチしています)こればかりは、くれぐれもこの記事を読んで頂いた皆様には何卒お気を付けいただきたいところでございます。